エンジニアのキャリアについて語る際、しばしば「35歳定年説」という言葉が出てきます。しかし、この説は本当に正しいのでしょうか?この記事では、否定の立場からこの説を検証します。
35歳定年説の起源
35歳定年説は、エンジニアの市場価値が35歳を境に下がるという考え方です。これは、新しい技術の学習が難しくなり、体力的にも厳しくなるという理由から生まれました。しかし、これは一部の事例に過ぎず、全てのエンジニアに当てはまるわけではありません。
技術の進化とキャリアの多様性
現代のIT業界は急速に進化しており、新しい技術が次々と生まれています。そのため、エンジニアは常に新しい技術を学び続ける必要があります。しかし、これは年齢に関係なく全てのエンジニアに求められることであり、35歳を過ぎても新しい技術を学ぶ能力が失われるわけではありません。
また、エンジニアのキャリアパスは多様化しており、特定の技術を持ったスペシャリストやフルスタックエンジニアなど、様々な専門分野に精通している技術者が求められています。これらのキャリアパスは年齢に関係なく選ぶことができ、35歳を過ぎても新たなキャリアを追求することが可能です。
技術進化と経験の相乗効果
現代の技術進化は、過去の知識や経験を基盤として新たな技術が生まれるプロセスにあります。新しい技術が登場するたびに、その根底には過去の技術や理論が深く関わっています。したがって、長年の経験を持つエンジニアには、新しい技術を迅速に理解し、効果的に応用する能力が備わっているのです。
たとえば、新しいプログラミング言語が登場したとしても、その構文やコンセプトの多くは既存の言語から派生していることが多いです。長年にわたり複数の言語を扱ってきたエンジニアは、新しい言語を学ぶ際に、過去の知識を活かすことができます。これにより、学習曲線が緩和され、より迅速に新技術を習得し活用することが可能になります。
また、長年の経験は問題解決能力を高めます。新しい技術には必ずといっていいほど予期せぬ問題が伴いますが、多くの異なるプロジェクトや状況に対処してきた経験豊富なエンジニアは、これらの問題に対して柔軟かつ効率的に対応することができます。このような能力は、新しい技術をチームやプロジェクトに統合する際に特に価値があります。
最後に、経験は新旧の技術を組み合わせることで、より革新的な解決策を生み出す可能性を秘めています。長年の経験を持つエンジニアは、過去の技術と新しい技術の橋渡しをすることができ、これにより技術の進化をより一層加速させることができます。
このように、技術の進化は、単に新しいものを受け入れることだけではなく、長年の経験と知識を活かして新旧を融合させることで、さらなる高みを目指すプロセスです。経験豊かなエンジニアこそが、この進化の過程で重要な役割を果たすのです。
昔と現在の違い
35歳定年説が流行り出したのは2000年ごろで、当時のITエンジニアが置かれていた労働環境は、日をまたいでの激務が当たり前でした。しかし、現在では労働環境の改善が進み、過酷な労働が求められることは少なくなっています。また、リモートワークの普及により、体力的な負担も軽減されています。
35歳という線引きに確かな根拠がない
35歳定年説は、あくまで一部のエンジニアの経験に基づいたものであり、全てのエンジニアに当てはまるわけではありません。また、35歳という年齢が特別であるという科学的な根拠も存在しません。人それぞれ学習能力や体力、モチベーションは異なり、年齢だけで一概に判断することはできません。
35歳からチャレンジすることも可能
35歳を過ぎても新たな挑戦をすることは十分可能です。例えば、40代後半で建築土木系の技術者からドローンやロボットを活用するベンチャー企業に転職した人や、50代前半の営業部長がインターネット広告代理店の営業部長として活躍している事例があります。これらの事例は、年齢に関係なく新たな挑戦をすることが可能であることを示しています。
実際に筆者が未経験からITエンジニアに転職したのは、ちょうど35歳になった年でした。何を始めるにも遅いという事はありません。
まとめ
以上のように、35歳定年説は一部の事例に基づいたものであり、全てのエンジニアに当てはまるわけではありません。また、35歳を過ぎても新しい技術を学び、新たなキャリアを追求することは十分可能です。エンジニアとしてのキャリアは、年齢ではなく、自身のスキルや経験、そして何よりも学び続ける意欲によって決まるものです。